長方形と正四面体パズル

難しい問題が目の前に現れた時に、考え込んで止まってしまう場合があります。熟慮した解答で一発でクリアするのは快感でしょう。天才です。
手足や体を動かして自ら動きながら考えるのは天才風ではないですが、それはそれで楽しいものです。長方形と正四面体パズルは、天才肌では無い方に送る無窮の時間です。

遊び方は簡単です。
14個のピースを箱に詰めたり、積み上げて正四面体に組み上げましょう。考え込んでいないでピースを手に持って動かしましょう。慣れてくればピースの向きを変えて自由自在に配置することができるようになります。
ピース1個は4個の小さな立体が接着されてできています。14個のピースは14 x 4 = 56なので56個の立体で作られています。すべてのピースを平面に並べた一辺が7と8の長方形も7 x 8で56個の立体です。ピースを積み上げた一辺が6個の正四面体は 1+(1+2)+(1+2+3)+(1+2+3+4)+(1+2+3+4+5)+(1+2+3+4+5+6) で 56個の立体です。

ピースの説明

テトラへクスと呼ばれている正六角形を4個並べた7種類のピースをベースにしているパズルです。ピースの名前は、形が似ているアルファベットにちなんで、C型、I型、J型、P型、S型、Y型、Z型と呼ばれています。各ピースは「内接球を持つ切稜立方体」を4個接着したものです。写真で見てみましょう。

C型ピース2個

I型ピース2個

J型ピース鏡像各1個

P型ピース鏡像各1個

S型ピース2個

Y型ピース鏡像各1個

Z型ピース2個

C型、I型、S型、Z型は同じものが2個ありますが、J型、P型、Y型は鏡像関係にある各1個です。

内接球を持つ切稜立方体

このパズルで使っている「内接球を持つ切稜立方体」は一辺が30mmの立方体のすべての辺(稜)を45度で切り落としたものです。下の写真手前右側が立方体、手前左側が内接球を持つ切稜立方体です。パズルでは写真奥左側のように内接球を持つ切稜立方体の六角形の3面が接する頂点が真上を向くように傾けて使います。画面奥の右側のように立方体の頂点が真上を向いているような置き方に対応しています。

一辺が30mmのアカマツの角材から立方体を切り出します。

一辺が30mmの立方体の12個の辺を45度の角度で切り落としたものが18の面を持つ切稜立方体となります。切り落とす深さを調整して18の面すべてで直径30mmの球が内接するようにしたものが、「内接球を持つ切稜立方体」です。加工治具は3Dプリンターで作りました。

元々の立方体の面は小さな正方形として6個残り、切り落としてできた12面は細長い六角形となります。このパズルでは六角形の面が接して長方形や正四面体が出来上がります。下の図はZ型ピースの上に「内接球を持つ切稜立方体」を乗せようとしている様子です。赤、青、緑の3個の面で作られた窪みの中に「内接球を持つ切稜立方体」の下の面が収まります。

下の方から見た図を示します。接する面は完全に一致するようになっています。

つまり「内接球を持つ切稜立方体」の上下の面は180度回転した形なので、乗せた時に収まりが良いということになります。このような特徴があるので、J型、P型、Y型は鏡像関係にある一対となりました。

球であればJ型、P型、Y型も同じものが2個になります。球ならば置くことのできた配置でも「内接球を持つ切稜立方体」を使ったパズルでは窪みに収まらなくなってしまいます。そのような制約があるため「内接球を持つ切稜立方体」で作ったパズルの方が8倍程度難しくなると考えられます。

なぜ「内接球を持つ切稜立方体」を使うのか

Sendai Micro Maker Faire 2020(2020.1.25)では「球体による長方形と正四面体パズル」の初期検討モデルを展示しました。商店街などが年末のくじ引きに使うガラガラポンのプラスチック玉で作りました。小さくてたくさん手に入ったので一辺が8個の正多面体にしました。1+(1+2)+(1+2+3)+    +(1+2+3+    +n)が4で割り切れれば同じ構成のピースで組むことができます。

Maker Faire Tokyo 2020(2020.10.3/4)では木製モデルを展示しました。檜の湯玉用の木球を購入して穴と細い丸棒で球同士を接着しました。会場では多くの方に見ていただきましたが、気合を入れて完成させた方が一名いらっしゃいました。

球はシンプルで美しくて良いのですが、地元の木材を使って球体を自分で作るのは難しいのが難です。

正四面体パズルは高校の化学の授業で説明される面心立方格子構造です。球以外の立体を考えた時に、菱形12面体という多面体は面心立方格子構造で完全に空間を充填できるのでこのパズルに最もふさわしい立体と考えました。

でも、角材から六角柱に加工してさらに鉛筆を削るようなイメージで三面ずつ加工するため少し手間がかかります。その時に「内接球を持つ切稜立方体」も考えましたが、立方体の面影を残しているので下のように積み上げるピラミッドのような四角錐のパズルにしかできないと思ってしまいました。

 

半年以上経ってから「内接球を持つ切稜立方体」も方向を変えれば面心立方格子構造で積むことができることに気がつきました。治具も簡単なので採用ということになりました。

 

長方形と正四面体パズルは難しい?

初めてこのパズルに触った人は少し難しいと感じるかもしれません。小さい頃から直交座標に慣れ親しんでいるので、六角形が連結されたピースを箱詰めしたり、正四面体の面に沿ってピースを組み立てたりする経験があまりなかったからです。

正方形と立方体のパズルは、直交座標なので小学生でも積み木感覚で遊ぶことができます。

スクエアキューブパズル

長方形と正四面体パズルも慣れればひねりの効いた置き方を工夫したりして楽しくなっていくでしょう。このパズルは正解がたくさんあります。BurrToolsというプログラムで解の数を調べることができるので試してみました。長方形への詰め方は球形タイプの場合で約150万通りあるようです。これは1.7時間で終了しました。正四面体の組み方は、プログラムが終了するまでに500年かかるという表示が出たので、7時間動かしたところで止めたのですが、その時点で約200万通りでした。コンピュータにとっても手間のかかるパズルのようですが、膨大な組み合わせがあることはわかりました。長方形よりも正四面体の方が多様な組み方があるということわかりました。

感覚的には長方形よりも正四面体の方が簡単で、数個ピースを適当に置いても工夫すれば組み上げることができるようです。

無料で使えるパズルソルバーBurrTools(Win/Mac/Linux版)

数日かけても問題が解けないと元々解がない問題なのだろうかと考えてしまいがちです。そんな時にはパズルソルバーを使ってみましょう。
要領さえわかれば使い方は簡単です。使い方を紹介する記事を書きましたので上から順番にご覧ください。
パズルソルバーBurrToolsでスクエアキューブパズルを解く
パズルソルバーBurrToolsで正四面体パズルを解く

 

木のぬくもりを感じながら無窮の時間を楽しんでください。