春の花の光るメッセージボード(古民家ギャラリー ツキザワの家 2023 4/29〜5/5)

古民家ギャラリー ツキザワの家は、西和賀町にある藁葺き屋根の旧家の古民家を改修した展示施設です。奥羽自然観察会を主宰しているカタクリの会の瀬川 強さんが運営していて、瀬川強さんの写真作品と、水彩画家 川崎茂花さんの西和賀の山野草を描いた襖絵が常設展示されています。今回は「春の花」の企画展(2023 4/29〜5/5)に参加させていただくことになりました。

「光るメッセージボード」はガラス用マーカーペンで透明なアクリル板にメッセージを書くと下から照らしているLED光源でメッセージが浮き出て見えるものです。光がアクリルの内部から外(空気)に出ようとするとき、臨界角42.2°以下では100%反射(全反射)して外に出られなくなります。マーカーのインクが表面にあると、全反射せずに光が外に出てくることができます。これがメッセージが光る理由です。

マーカーのインク以外でも、アクリルの表面に傷などがあると凹凸で散乱して光が外に出てきます。凹凸の密度が高いほど光が出てきて、凹凸のないところからは光は出てきません。レーザー加工機でアクリルの表面を加工すると、写真の濃淡に対応するように光らせることができます。

原理は単純ですが、写真の濃淡に応じて凹凸をつけるのは少し工夫が必要です。
(1)  [写真素材は白黒] カラー写真で素敵に見えても白黒にすると何が写っているかわからなくなることがあります。白と黒のメリハリのある写真が良いでしょう。
(2)  [網点] 印刷物の写真のように200線ぐらいの網点を使います。無料で使える画像処理ソフトGIMPでは、フィルターメニュー > 変形 > Newsprint… で網点にすることができます。
(3)  [トーン] レーザー加工機で網点加工すると、飛びやすく潰れやすい性質があります。飛びやすいというのは、小さな点はアクリルが溶けないのである程度大きな点になるまで加工が始まりません。潰れやすいというのは、逆に周りが加工されている中に加工しなくても良い点があっても一緒に解けてしまいまって、余分に加工されてしまいます。
(4)  [網点の凹凸] 網点は白から徐々に点が大きくなって、50%を超えると黒の中の白点が小さくなっていきます。単純に言えば0%から50%までは凹凸が増えていきますが、50%を超えると凹凸は減っていきます。
(5)  [白黒反転] レーザー加工では黒い部分が加工されて凹凸になり、凹凸が光を散乱させて白く光ります。つまり、黒と白が反転するので、あらかじめ白黒写真の白黒を反転させます。
(6)  [左右反転] アクリルの裏面にレーザー加工をした方が反射光量が得られるので、画像は左右反転して正面から見たときに正しい像になるようにします。

この中で(3)と(4)はトーンカーブで調整します。

原画の0(黒)-255(白)を143(黒)-230(白)に変換しています。黒付近と白付近で傾きを変えているのは”飛びやすくて潰れやすい”性質を補正するためです。(実際の作業では白黒反転した後で、トーンカーブを適用しています。)このトーンカーブを調整すればもっときれいになるのではないかと思います。

 

LEDユニットは3Dプリンターで作りました。

 

Fusion360のスクリーンショットはユニット下面を見た図になります。LED基板とUSBコネクタ(USB Type-Cコネクタ 電源供給用)と配線が収まります。

照明用LEDは秋月電子通商の太陽光LEDモジュール(白色LED)5Vを使っています。目に優しい自然光に近い光というのが特徴です。75mm角用はLEDモジュールを1個、150mm角用は2個連結して使います。

https://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-15933/

2023.04.02

LibreOffice DrawのSVGファイルをAI風のSVGファイルに変換する方法

背景
レーザー加工用の切断データはパス(Path)と呼ばれるベクトルデータで作成します。周知のようにベクトルグラフィックソフトのデファクトスタンダードはAdobe Illustrator(AI)ですが比較的高価なため、趣味として切断データを作成する場合にはLibreOffice Drawなど無料のベクトルグラフィックソフトを使います。

課題
自宅でLibreOffice Drawを使って切断データを作成し、SVG形式のファイルをUSBメモリに保存してレーザー加工機のあるファブ施設に向かいます。ファブ施設ではデファクトスタンダードなAIがレーザー加工機のインターフェースとなっている場合が多いので、LibreOffice DrawのSVGファイルをAIに読み込ませます。AIで開くと、一見、作成した時と同じ図形のように表示されますが、実際は同じ図形が二重になっています。そのままレーザー加工機で加工を行うとレーザーが二度通過するために多くの時間がかかったり、切断面が焦げてしまいます。慣れないAIを使って手作業で重なったパスを取り除くのはかなり苦痛な作業です。AIはプロが素早く作業ができることを目指していて、素人が使うようにはできていないのです。
SVGファイルならば全て二重になるかといえば、そんなことはありません。AIで作成した切断データをSVG形式で保存して、それをAIで読み込んだ場合は二重になるような不具合は生じません。
SVGファイルはテキストで書かれているので、テキストエディタで開いて両方のファイルを比べてみると、AIで作成したSVGファイルはヘッダーとパスしかないシンプルなファイルであることがわかりました。つまり、AI風なSVGならOK!!

無料のベクトルグラフィックソフトで作成した加工図を使って不具合なくレーザー加工をするために、「LibreOffice DrawのSVGファイルをAIで作成したSVGファイルのように変換したい」

解決方法
LibreOffice DrawのSVGファイルからAIが必要とする部分だけを抽出して新しいファイルを作成する。テキストファイルの文字列操作なので、ほとんどのプログラム言語で容易に作成することができるはずです。ここではMac OS、Windows 10、Linux用に実行ファイルを作成できるProcessing(バージョン3.3.5)を使用しました。個々のPCで実行するためには無料のJava実行環境をインストールする必要があります。Mac OSとWindows 10では動作を確認しましたが、Linuxでの動作は未確認です。

プログラムを実行し、ユーザーが変換するファイルを指定すると、「xml:space=”preserve”>」が含まれるヘッダー行と「<path fill=”none”」が含まれるパスデータだけを抽出して、ファイルの末尾に「</svg>」を置きます。そしてファイル名の末尾に「_ai」を追加した新しいファイルを作成します。

ProcessingプログラムファイルとサンプルSVGファイル
実行ファイル(Javaランタイムエンジンを別途ダウンロードする必要がある)
Windows64bit
Windows32bit
Mac OS
Linux64
Linux32
LinuxArm64
LinuxArmV6hf

その他
InkscapeのSVGファイルも同様な処理をすればAI風なSVGにできると思いますが、私にはInkscapeが使いづらいので確認する意欲がありません。Inkscapeの好きな人は多いと思いますのでどなたか検討していただけるとありがたいと感じてくれる人が多いのではないかと思います。

LibreOffice Drawは使いやすいですよ。

 

無料で使えるドローソフトGravit Designerの紹介

ドローソフトの定番はイラストレータですが、プロ用の高機能・高価格なアプリケーションなので自宅での趣味に使う人にはお勧めできません。

これまでは無料で使えるオープンオフィスドローを勧めていたのですが、これからはGravit Designerです。

レーザーカッターの加工図を描く時にどの程度使えるか理解してもらえるように
ベクターデータ作成の手引き
を作成しました。ぜひダウンロードして目を通してみてください。

画像のトレースについて付録に追加しました。(b04—-2020.11.04)

 

 

 

 

「スクエア&キューブパズル」地産材でのクラフト製作の勧め

“Square & cube puzzle” :Recommendation for crafting with local wood

この記事はMFTokyo2019 (Maker Faire Tokyo 2019 )エントリーシートの予稿です。

「メイカーフェア東京2019での計測・解析ラボのプロフィール」
計測・解析ラボは盛岡市を拠点に個人事業としてLabVIEWプログラムの受託開発とArduinoなどオープンなハード・ソフトの講習会を行っています。プログラムとレーザーカッターを使った木工パズルデザインは3年目となり、地域の木材活用と木工クラフト作家との連携を模索しています。MFTokyo2019ではパズル作品を通しての交流やメイカー向けLabVIEW Home版の情報共有を行いたいと思います。

「メイカーフェア東京2019での出展内容の紹介」
正方形から立方体を組むことのできる幾何学的な美しさが特徴のスクエア&キューブパズルです。立方体4個を平面に並べた5種類のピースを16個使ったパズルで、PCやスマホで疲れた目を休めて指先を使い立体図形に親しむことができます。レーザーカッターで作ったプロトタイプを見本に岩手県内の木工家に地域材を使ったクラフト製作を勧めています。もちろん3Dプリンターでの自作も可能です。

12cm Cube(Left) and 6cm Cubes(Right)
15mmのアカマツ材をレーザー加工

 

デモビデオ@ユーチューブ

パズルのデモビデオ(ユーチューブ)

 

「スクエア&キューブパズル」の製作の経緯
MFTokyo 2018では「チーム岩手」から「プログラミングとレーザーカッターの素敵な関係」というタイトルで参加しました。2次元の図案をレーザーカッターで加工すると厚みのある2.5次元のパズルに成ります。次回のMFTokyo 2019ではレーザーカッターで3次元のパズルを作成したいと考えていました。

ちょうどFusion 360を使い始めて立体的な箱物を作る時のはめ込み設計に便利なことに気がついて操作の練習をしていたのですが、レーザーカッターで作ったピースを組み立てて立方体にするアイデアが浮かびました。正方形から切り出したピースが立方体になるパズルは幾何的に美しい構成です。単位立方体の個数で表現すれば次のような関係に成ります。

(正方形)  (立方体)  (単位立方体の個数)

8 x 8 = 4 x 4 x 4 =64

27 x 27 = 9 x 9 x 9 = 729

128 x 128= 16 x 16 x 16 = 4096

とりあえず、一番小さな組み合わせの4 x 4 x 4の立方体で考えることにしました。テトロミノというテトリスで有名な形状は正方形4個の組み合わせで5種類できるので、Fusion 360で4 x 4 x 4の立方体のモデルを作って4個づつ”結合”して全てテトロミノにすることができるか実験してみました。何度か試行錯誤して16個のテトロミノに分割できました。次はその16個で正方形ができるかやってみました。正方形になりました。

平面パズルに使っている厚さ6mmのアカマツ板では2.4cmのキューブにしかならないので、厚さ10mmを注文して作成しました。できることはできるのですが、まだ小さいので、レーザーカッターの限界と言われる15mmの板を注文して作りました。正方形のサイズは12cm、立方体のサイズは6cmになります。正方形の外枠を14cm角にすると持ち運びを考えるて手頃な大きさだろうと思います。外箱は一関の金森紙器さんに作ってもらいました。

一関市の金森紙器さんの外箱

テトロミノについて知っておこう
正方形を2個つなぎ合わせた形状をドミノ と言います。3個つなぎ合わせたのがトロ ミノ、4個つなぎ合わせたのがテトロミノ です。5個つなぎ合わせるとペントミノで すが、このようにN個つなぎ合わせた図形 の総称をポリオミノと言います。テトロミノは5種類ありますが、図形の特 徴からI、L、T、Z、Oと呼ばれています。 I、L、Tは見た目通りですが、正方形をO、 残った1個がZです。
スクエア&キューブパズルには4個の単位立方体で作 ったテトロミノが16個入っています。5種類のテトロミノから16 個選ぶ方法はたくさんありますが、I型が3個、L型が4個、T型が2 個、Z型が3個、O型が4個の組み合わせに しました。

地産材でのクラフト製作の勧め
岩手に旅行で来た時に地元のクラフトマン が作ったスクエア&キューブパズルを目にする日が来 るかもしれません。地域の木材を使ったパ ズルは、木の種類によって色や木目、重さ や手触りが違うことを発見して自然を身近 なものとして考え、豊かな森林への関心を 高めることができるでしょう。西和賀町に 広がる国内有数のブナ林、北限のツバキが 咲く大船渡、遠野地方の広葉樹、久慈の南 部赤松、平庭高原の白樺など広い岩手県に は地域を代表する木が多くあります。天然 木の手触りの良さとともに地域性が感じら れるスクエア&キューブパズルが各地で購入できたら 嬉しいことです。もちろん秋田の杉、青森 のヒバなどを使って各地のクラフトマンが 作ってくれたらもっと面白いだろうなと思 います。

スクエア&キューブパズルに関連する特許
独自の発想で作ったパズルですが、幾何的にきれいなパズルなので誰か他の人も考えていただろうと思って、スクエア&キューブパズルに関係する特許について調 べてみました。古い特許ですが1988年にアメリカで登録され た「BLOCK PUZZLE」という特許があり ました。テトロミノ16個を正方形に詰める パズルとテトロキューブ(立方体を立体的に4個つないだ図形)16個を立方体に組むパズ ルを併記しています。正方形に詰めるパズルの厚みを変えるだけで立方体ができるのですが、念頭にはなかったようです。

サイコロでスクエア&キューブパズルを作ろう
とりあえずパズルが欲しい人はサイコロを瞬間接着剤で接着してパズルピースを作ってみましょう。16mmのサイコロが50個入りで1100円ぐらいで購入できます。

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木目のパズル「プログラミングとレーザーカッターの素敵な関係」

Wood grain puzzle “Lovely relationship between Processing programming and laser cutter”

この記事はMFT2018 (Maker Faire Tokyo 2018 )エントリーシートの予稿です。

出展者のプロフィール
レーザー加工といえばイラストレーターで図案を描いてMDFを切り抜くものという風潮に抗って、Processingプログラムでパズル図案を描いて、地元の木材をレーザーカッターで切り抜いて木目のパズルを作っています。本業は計測の自動化と解析処理用のLabVIEWプログラムを提供していますので、LabVIEWホーム版を使ったArduino+FM音源YMF825の音作りツールも紹介する予定です。

出展内容
プログラムで描いた画像をレーザー光線がたどって切り取ってくれる。画面の中の五角形が厚みを持った五角形の木片になる。ジグソーパズルの無限の組み合わせをプログラムで描いて、地元の木材でパズルを作ってみよう。絵はいらない、木目が元の場所を教えてくれるから。久慈の南部アカマツ、遠野の桜、浄法寺のウルシ、木目は木の物語。プログラミングとレーザーカッターの素敵な関係を提案します。木目のパズルを見に来てね。

ジグソーパズルの製作
(1)Processingでピースの形状をランダムに作画します。
(2)レーザーカッターで切断します。
(3)パズルの完成です。
(4)画面の図形が厚みを持ってさわれる!!!

デモビデオ「プログラミングとレーザーカッターの素敵な関係」
https://www.facebook.com/koji.ohashi.12/videos/1696150310460940/

五角形のパズル

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Processingでレーザー加工用図形をプログラムしよう!!

Processingって何?

たくさんあるプログラムツールの中でProcessingを選ぶ理由は四つ。
(1) オープンソースなので無料で使うことができる。
(2)図形をPDFで出力できる。
(3)グラフィック関連の関数が一通り揃っている。
(4)プログラムサンプルが豊富で使いやすい。

 

タングラムという古典的な図形パズルを例にプログラム方法を紹介します。

タングラムって何?

プログラムで作成するタングラムの図案。
図案が少し違いますが、タングラムを切断加工している様子です。
プログラムサンプル

processingでのプログラムはディスプレイに表示することを主眼に作られているのでピクセルが基本単位です。72ピクセルが1インチ(25.4mm)ですから、1mmは72/25.4ピクセルとなります。長さ100mmは100*72/25.4ピクセルとなります。つまり、欲しい寸法(mm)とプログラムで使うピクセルの変換は72/25.4を掛ければ良いだけです。

また、ドキュメントサイズを変数で指定することとPDFライブラリを使用していることに注目してください。